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第3回定例会での一般質問(2)介護保険について

2、介護保険について
 改定介護保険法が四月からスタートし半年が経過しようとしています。これまでも、介護保険制度は、保険料を年金から自動的に天引きされながら、基盤整備はおくれ、利用料負担は重く「保険あって介護なし」と指摘され、矛盾をかかえたまま実施されてきました。今回の改定は、これらを改善するどころか、「要介護度が低い」と判定された高齢者から、介護保険で利用してきた介護ベッド・車イス、ヘルパーやデイサービスなど、公的介護サービスを奪うひどい改悪です。身体や生活の状態は変わらないのに要介護度だけ軽く変更されて、それまでの介護が受けられなくなる人も増えています。給付費抑制を優先するあまり、高齢者の実情を無視した機械的な調査や判定が広がっていることも指摘されています。政府・与党が宣伝した「介護予防」「自立支援」「介護の社会化」とはまったく逆のことがおきています。わが党区議団が行ったアンケートにも「保険料を値上げするなら老後の生活をきちんと保障してほしい。値上げばかりしているのに良くなっていない」「保険料は払っていても、いざというときに利用できるとは限らない。われわれの年代は、介護難民になるのはあきらか」「利用するときにいろいろなことをクリアしなければ利用できない。保険があるから安心というものでなく、持ち出し分も多くあり、利用したくても個人負担が生じる」などの声が寄せられています。こうした区民の声にもあらわれているように、介護保険は「保険料だけとりたてて、介護は受けさせない」制度へと重大な変質を始めています。この改悪をごり押しした政府・自民・公明与党、賛成した民主党の責任は重大です。
 いま、自治体には、国いいなりに高齢者から公的な介護を取り上げてしまうのか、それとも自治体としてできる限りの努力をするのかが問われています。以下、当面緊急に解決が求められている問題についてうかがいます。
 最初に、軽度者に対する介護用ベッド取り上げの問題です。
 要介護度1以下の軽度の高齢者は、四月から、「寝返りがうてない、起き上がりができない」人をのぞいて、介護用ベッドの貸与が受けられなくなりました。杉並での従来からの利用者は約1000名ですが、この方々への経過措置も9月末が期限とされ不安が高まっています。 
 私は、区内で要介護度1以下でベッドを利用している方々の事例をきいてまいりました。要介護度1、84歳の女性。腰椎ヘルニア、乳がん手術後。足首からつま先にしびれがあり、左乳房を切除していることから、左上肢に違和感があり、寝返りに苦労しています。サイドレールにつかまることでなんとか起き上がれる状態。要介護1、81歳男性 肺気腫で在宅酸素療法。椎間板ヘルニアで腰痛あり。立ち上がりが困難でベッドを利用しています。呼吸苦の軽減のため少しギャッジアップして過ごすこともあります。要介護度1、79歳男性。リウマチ性多発筋痛症、うつ病が悪化し、食事以外はほとんどベッドで臥床して過ごしている状態です。ベッドを取り上げられたらと心配で夜も眠れないとのことです。こうした方々は、認定調査のときに、ベッドの柵につかまって時間をかけてようやく寝返りや起き上がりができるということをもって「寝返り、おきあがりができる」と判定された方々です。そうした方々の実態もみずに、乱暴にベッドを保険給付からはずす国のやり方に対して「病人からふとんをはがすようなもの」「まさに貸しはがしだ」など、批判と怒りが集中しています。地域包括支援センターや23区の介護保険課長会からも、ベッドの給付制限によって生活が著しく困難になるケースがあいつぐことが指摘され、どう対応するのかという声があがっています。
 現在、介護ベッドを利用している高齢者で、国の基準「起き上がりや寝返りができない」という人以外でも、サービス担当者会議で必要と判断した場合は、保険給付の対象とすべきですが、区の見解を求めます。
 介護保険でベッドを利用している場合、現在は、多くの人が1ヶ月1,500円前後で利用しています。これが全額自己負担になればレンタルでも1ヶ月15,000円から20,000円、購入するとなると70,000円から80,000円にもなります。「そんな負担はとても無理。でもベッドを取り上げられたら暮らせない、なんらかの助成をしてほしい」」と切実な声があがっています。利用者負担を500円まで、生活保護者は無料とした港区、月額3000円を上限に所得制限なしでレンタル利用料の一部を助成する北区など、レンタル料の補助を行う自治体が相次いでいます。こうした自治体の利用者は「これで安心して生活できる」と安堵しています。介護ベッドを自費でレンタルする高齢者に対し、現行水準よりも負担が増えないように、区の一般施策として助成を行うことを求めますがいかがか、答弁を求めます。

[答弁]軽度者に対する介護ベッド等の貸与に関するお尋ねですが、今回の見直しは介護予防の趣旨をより徹底するために行うものでございますので、国の示した基準に沿って保険給付を行うべきと考えております。まお、車イスにつきましては、一定の要件を満たし、サービス担当者会議等で必要と判断される場合は給付対象となります。また、自費でのレンタルに対する助成については、区が調査したところ従来の負担額と同程度でレンタルを行う事業者もあることなどから助成の必要性はないと考えております。

 次に、新予防給付、地域包括支援センターについて伺います。
 要支援1・2の人の「介護予防ケアプラン」は、地域包括支援センターが作成します。従来のプランよりも手間がかかりますが、支払われる介護報酬は約半額の4000円に引き下げられました。プランを作成する地域包括支援センターや委託された事業所は「人件費すら出ない」と悲嘆にくれています。さらに来年四月以降は、ケアマネージャーは1人8件までしか担当できなくなり、ケアプランをつくってもらえず、サービスが利用できない「ケアマネ難民」が生まれるのではないかと現場では不安が高まっていますが、区の認識はいかがかうかがいます。あわせて、「介護予防ケアプラン」をつくる体制について、今後どう対応していくのかお答えください。

[答弁]予防給付ケアプランについては地域包括支援センターが責任を持って作成することになっており、その業務の一部を居宅介護支援事業所に委託できることになっております。現在杉並区では20ヶ所の地域包括支援センターが中心となりケアプランを作成しておりますので、いわゆる「ケアマネ難民」が生まれることはないと考えております。今後に付きましてもそれぞれの地域包括支援センターにおいて対応できるものと考えております。

 地域包括支援センターは、社会福祉士、保健師、主任ケアマネージャーの三つの専門職を中心に、介護・福祉・医療などの連携をとり、地域の高齢者の生活を総合的に支えていく拠点となるもので、区が運営に責任をもっています。杉並区では在宅介護支援センターからの移行も含め20箇所設置されましたが、4月からこれまでの運営状況および課題について、区はどのように認識しているのでしょうか。また、新予防給付は計画に対し、実績はどうなっているのでしょうか。通所型のサービスが進んでいないとの状況もきこえてきますが、現在までの実施状況はどうなっているのかうかがいます。

[答弁]いずれの地域包括支援センターにおきましても、介護予防マネジメント、高齢者総合相談、高齢者虐待防止、継続的・包括的マネジメントや新予防給付マネジメントなどの各事業の実績から、おおむね着実な運営がなされていると認識しております。
 また、地域の民生委員、町会・自治会、医療機関、サービス提供機関、区民ボランティアなどとの連携による地域のネットワークづくりを進め、地域包括支援センターが、地域の高齢者への援助・支援を包括的に行う中核機関としての役割をさらに高めていくことが課題であると考えております。

 最後に、利用者負担の軽減についてうかがいます。
 4月の改定にさきがけて、昨年10月から介護施設等の居住費・食費いわゆるホテルコストが全額自己負担になりました。全国で経済的理由による施設退所者があいついでいます。区は、こうした制度の変更が、介護サービスの利用状況や利用者・家族にどのような影響をもたらしているか把握しているのでしょうか。
 利用料の減免制度は、各自治体に広がっています。杉並区は、平成13年度から老齢福祉年金受給者等で世帯全員の区民税が非課税の人の利用者負担上限額を月額3000円とし、それを超えた分について区が助成する利用料減免制度を始めました。しかし、対象者がせますぎます。増税と負担増が高齢者におしよせるもと、もっと対象者を広げるべきですが、見解を求めます。あわせて、介護施設の居住費・食費についても軽減制度を設けるよう求め、私の質問を終わります。

[答弁]区の負担額助成制度は、サービス利用者の応益負担を原則とする制度の趣旨を踏まえながら低所得者層へのセイフティ・ネットを拡充する観点から、老齢福祉年金受給者で世帯非課税の方等に対象を限定して助成を行うものでございますので、現時点では対象者を拡大することは予定しておりません。また、介護施設の居住費・食費の自己負担については、在宅の方との公平性の観点から行われたものであり、低所得の方には負担額限度が設けられていることから区として軽減制度を設けることは考えておりません。
 昨年10月以降において施設利用等の介護サービスの利用状況については大きな変化は見られません。また、今年4月から実施された新予防給付については、認定者の増加に伴いサービスを受ける方も増加してきている状況でございます。引続き介護予防の考え方や必要性を理解していただけるよう周知に努めてまいりたいと存知ます。