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2010年決算特別委員会 意見開陳(全文)

 日本共産党杉並区議団を代表して、平成21年度杉並区各会計決算に対する意見を述べます。

 当該年度は、前年9月のリーマンショックの影響を大きく受け、100年に一度と言われるくらいの大きな経済危機が世界的に広がった年でした。国内では、大企業を中心に、正社員から派遣労働に置きかえる雇用形態の変化とともに、派遣労働者の使い捨てと正社員の過酷な労働強化が深刻な形であらわれました。年末年始にかけて、2年連続で年越し派遣村が設置されたことも記憶に新しいところです。
 所得の低下で国民・区民のくらしは苦しくなる一方、大企業の内部留保は200兆円をこえる空前のため込みがすすめられました。こうしたなか、国民の変革を求めるエネルギーが、自民・公明政権にピリオドを打ち、民主党政権を誕生させました。しかし、新政権は、公約していた後期高齢者医療制度の廃止や労働者派遣法の改正、普天間基地問題、政治とカネの問題などで国民の期待を裏切り、先行き不安な状況を継続させています。また、区内においては、保育園入園希望者が殺到するなど、雇用や経済状況の悪化の影響を正面から受ける事態が鮮明になりました。
 こうした状況のもと、杉並区が国の悪政から区民のくらしを守る防波堤としての役割を果たすことが求められました。当該年度は山田区政の11年目、結果的に最後の総決算の年度になりましたが、一言で言うと、自治体の責務である「福祉の増進」という役割を果たさなかったと指摘するものです。
 以下、理由を述べてまいります。
 
 まず、減税自治体構想についてです。
 山田区政は、毎年、一般会計の1割約150億円という巨額をためこみ、区民税を10年後に10%減税、100年後に無税にするという減税自治体構想の準備を最優先にすすめました。区財政を家計と同列におき、予算単年度主義をあたかも無理やりその年度に使い切るような印象をあたえる「使い切り予算」として批判。しかも、「めざせ減税自治体構想」というマンガパンフまでつくり、一方的にアピールしてきました。しかし、区が多額の経費をかけて宣伝しても、わが党が実施した区民アンケートでは「構想そのものを知らない」という回答が圧倒的多数でした。区政を大きく左右する重大問題でありながら周知度は低く、議論する基礎すらできていなかったことは明白でした。それにもかかわらず、10年後、100年後までしばりをかける減税自治体構想をすすめたことは絶対に容認できません。

 次に、区財政をめぐる状況についてです。
 監査意見書では各会計ともに「収入未済額は5年間で最低」だったと示しています。いかに、区民生活が苦しくなったかを示す一つの指標です。しかも、住民税の税率が2007年に10%へフラット化されて以降、下がり続けています。国民に 痛みを我慢せよと押しつけた小泉構造改革の悪政のもと、そのつけが低所得者を襲っているのです。川崎市で実施しているような税の減免制度の拡充を求めても、まったく対処しない区の姿勢は認められません。
 山田区政は、借金ゼロ政策をかかげ、執拗に不要不急の繰り上げ償還を行ってきました。わが党は10数年前から、利率7%などの高利の区債は繰り上げ償還や低利なものへ借り変えよと求めてきました。しかし、今日まで4%以上の区債が残されてきたり、低利のものを繰り上げ償還し、区民の緊急要求に応える財源に回さなかったことは許されません。
 また、基金の積み立ては総額400億円にのぼっていますが、特に財政調整基金の積み立てはまったく無計画で、とにかく多ければ多いほど積み上げればいいという政策は認められません。
 区は財政難を強調してきましたが、財政破綻まじかといわれるような状況は山田区政以前から今日に至るまで一度もないことは、地方財政健全化法に基づく4つの指標からみても明らかです。巨額の基金を貯め込む一方で財政の危機をあおり、福祉・介護・教育などの充実を拒んだ政治姿勢は容認できません。
 国庫支出金の削減影響額は、国の負担割合の削減や三位一体改革の影響で当該年度約56億円にも及びました。国は「地方分権」や「地域主権」を掲げていますが、「仕事は地方へ、しかし国は金をださない」というのが実態です。国に対して強く改善を求めるべきです。 

 次に、民営化・行革について述べます。
 セシオン杉並の運営を委託していた営利企業が経営破たんし、2ヶ月半にわたって労働者に賃金が支払われなかったという前代未聞の事件がおこりました。区は「事業者と労働者の契約に関わる問題」と繰り返すのみで、問題解決に背を向け続けました。また、民営化によって労働者の賃金が低く抑えられていたこと、さらには、民営化した施設で働く労働者がどんな労働条件で働いているか、まったく把握していないこともあきらかになりました。無責任きわまりない姿勢であり、本当に許せません。
 職員1000人削減を強行してきた山田区政でしたが、一方で非正規雇用を増やし、積極的に官製ワーキングプアをうみだしてきました。ひとりひとりの職員の負担が増加し、精神疾患が増えてきていることは、わが党が数年来指摘してきたことです。「効率化」が職員の健康に重大な影響を及ぼしていることは明らかです。
 こうした山田流行革・民営化路線は、結局、「全体の奉仕者」としての自治体労働者の誇りを奪い、主権者・区民に対する責任を投げすてて自治体を解体するものであります。厳しい総括を求めます。

 次に、経済対策についてです。
100年に一度と言われる経済危機の中で、緊急経済対策は十分だったのでしょうか。プレミアム付き商品券が実施されたことは、わが党区議団も要求したことであり評価しますが、総額11億円のうち1億円のプレミアムだけでは、厳しい経済状況に追いついていません。さらに問題点として、発行に関わる経費が商連負担となっており、改善が求められます。また、地元業者育成の立場からみれば、前払い金の増額要求に応えず、10億円以上のジョイントベンチャーにおいて地元業者2社以上を条件とする要求にも応えていません。公共事業における工事においては、末端で働く労働者の賃金確保は急務の課題です。公契約条例の制定を求めても、拒否し続ける区の姿勢は認められません。早急に踏み出すべきです。

 次に、貧困と格差の広がりにあえぐ区民にあたたかい手を差し伸べたのかどうかです。
 不況で共働きでないと生計をたてられない子育て世帯が急増し、認可保育園への入園申請が殺到しました。当該年度4月入園を希望しながら入れなかったこどもは約660人にのぼりました。区は「予測できなかった事態」と弁明し、区独自の保育室の設置など緊急対策は講じたものの、認可保育園の需要がありながら計画的に整備してこなかったツケが一気に噴き出した形となりました。保育施設の整備計画が策定されましたが、4年間で1200人分の保育の定員増を図るというものの、認可保育所の定員増は343人分に過ぎず、大半が認可外施設の定員増というものです。国の最低基準を満たした認可保育園の増設に対し、極めて消極的な区の姿勢は公的責任を放棄し区民の願いにも反するもので認められません。なお、今年4月の待機児童数は23名としていますが、これは認可外施設に入所すれば待機児としてカウントしないとした新基準での数です。2月の第一次申請では、836人ものこどもが待機児童となったことを重く受け止め、認可保育園を大幅に増やすよう強く求めます。
 区立幼稚園を区独自の幼保一元化施設「子供園」にする方針が突然打ち出されました。幼保一元化にはさまざまな課題があるなか、8月に計画を発表し、保護者の十分な納得もないまま今年4月に強行という乱暴な進め方自体も、また幼稚園教育の公的責任の放棄という点でも認められません。
 介護保険は制度開始から10年目となった年でした。「介護の社会化」と言われながら、介護認定のあり方やサービス抑制など、介護を取り巻く状況は深刻化する一方です。わが党区議団が長年求めてきた生活困窮者に対する区独自の保険料減免制度がこの年ようやく始まりましたが、サービスの不足を補うような区独自の施策は講じられませんでした。特養ホームの待機者は約1800人。高齢者についても、施設の整備計画が策定されましたが、区民の切実な願いである特養ホーム増設は4年間で300床にとどまっています。さらなる拡充を求めます。高齢者の安否確認・見守り事業について、地域包括支援センター任せでなく、区職員の直接訪問も行うよう繰り返し求めてきていますが、この点についても改善が見られず、公的責任を果たしていないと指摘するものです。
 障害者施策については、グループホーム・ケアホームの整備とともに、ショートステイの増設は切実な願いです。ところが、区は明確な整備目標をもっていないことが明らかになりました。緊急時の場合も含めたショートステイ整備の明確な目標を持つべきです。
雇用情勢の悪化で、職を失うと同時に住まいも失い路上生活にならざるをえない人が増加しました。生活保護をすぐに適用せず、緊急一時保護センターや民間宿泊所へ誘導している福祉事務所の対応は、厚労省の通知にも反するもので許されません。改善を求めます。被保護世帯の増加とともに、内容も複雑、困難なケースが多くなっています。ところが、ケースワーカーひとりあたりの抱える世帯は95世帯、これでは被保護世帯の状況にあった援助や指導ができません。少なくとも国標準の80世帯にするよう手厚く人員を配置すべきです。また、精神疾患を抱えた受給者に対する行きすぎた就労支援は改めるべきです。  
 国民健康保険料は当該年度も引き上げられました。失業や収入の激減など経済情勢の悪化で、保険料を払いたくても払えない世帯は増加し、収納率は過去5年間で最低となりました。区独自の保険料軽減や区長が認める減免の適用範囲を広げるなどの支援が必要です。しかし、区はこうした対策を取らなかったどころか、前年度をうわまわる907件もの資格証明書を発行し、生活困窮者に対する一部負担金減免制度の活用についても消極的でした。積極的に区民の命と健康をまもる姿勢がなく認められません。
 高い保険料と差別医療を押し付ける後期高齢者医療制度は、厚労省の担当者が明確に述べたとおり、医療費が増える痛みを高齢者自身に感じ取ってもらうために作られた制度です。「必要な制度」という区の姿勢は認められません。短期証の発行もやめるべきです。

 次に、住みよいまちづくりを進めたかについてです。
 杉並区の公園は不足しています。23区を比較すると一人当たりの公園面積および区の面積に対する公園面積の比率において、杉並区は最下位のランクとなっています。公有地や生産緑地を確保し、公園を計画的に増やせと要求しても、応えない区の姿勢は「みどり豊かな杉並区」を否定するものです。
 地球温暖化対策については、当時、山田区長は「温暖化はCO2だけが原因ではない」と人為的影響を否定し、世界の研究者の見解を批判しました。気候変動論をねじまげた区長の見識は、結局、地球温暖化ガス削減目標の制定にストップをかける役割を果たしたものであります。太陽光を利用した自然エネルギー対策では、補助制度は低所得者まで行き届いておらず、今後一層の拡充を求めます。
 住宅問題では、区は「住まいは人権」という立場に立っていません。区営・都営住宅の当選倍率は宝くじ並みになっています。民間住宅のストックが量的に充足しているという理由で、区営住宅を増やさないことは、区民の切実な願いを踏みにじるものです。また、民間住宅入居の際、保証人に困っている区民にも、何ら手を差し伸べない姿勢も問題です。
 災害対策は、いかに災害を最小限に食い止めるか、事前の対策が重要ですが、その施策が極めて弱く不十分な位置づけになっていることは納得できません。対応を早急に確立すべきです。
 外環道路計画は、関係住民の大きな反対があるにもかかわらず、「必要な道路」と言って、国や都と一緒に推進してきました。環境破壊そのものであるとともに、巨額の税金をつぎ込む浪費であり、認められません。

 次に、格差を広げ、機会均等を奪った教育問題についてです。
 今、教育は新自由主義路線のもと、憲法や教育基本法の精神を逸脱し、財界・大企業の戦略にのって、できる子、できない子の振り分けを平気でおこなう大きなうねりの中に吸い込まれようとしています。
 学校希望制は、教育の重要な柱のひとつである地域のコミュニティと教育力を破壊してきました。さらに、学校統廃合のかっこうの手段になっており、多くの区民から疑問や批判の声が寄せられています。すでに他の自治体では破たんがあきらかとなっており、見直すべきです。
 統廃合の手段として小中一貫教育が打ち出されました。小中一貫教育は、小学校から差別と選別をすすめ、教育の機会均等の大原則から逸脱するものです。本格的な検証もされていないまま拙速に進めようとする区の姿勢は容認できません。現に、小中一貫教育が行われている和泉地域では、中1ギャップのメリットが消されていること、三菱総研に1200万円払って作られた授業のカリキュラムが成功していないこと、小学校の英語教育がかえって英語嫌いを生みだしたこと、小学生の3分の2が他の中学校を選択していることなど見れば問題はあきらかです。もともと統廃合のための政策であり、白紙に戻すべきです。
 30人程度学級は小学校4年生までの計画に終わっています。学校希望制を中止し、ただちに小中学校全学年まで広げれば、一学年1クラスの学校も解消されます。これは、児童、教師、父母の願いであり、世界的な流れでもあります。文字通りすべての学校を残すために、30人学級の全学年での実施を求めます。
 当該年度、中学校の教科書採択が行われました。わが党区議団は、「新しい歴史教科書」の採択をおこなうべきではないと強く主張してきました。それは、この教科書の内容と教科書を作成した「つくる会」の目的が、侵略戦争を美化するもので、憲法と教育基本法を真正面から蹂躙するものであるからです。世界と日本の公理を真っ向からふみにじる戦争肯定論を公教育で子どもに教え込むことは絶対に許されません。この教科書採択へ道筋をつけた山田区長と採択に賛成した教育委員に対して、満身の怒りを込めて、採択のやり直しを求めるものであります。
 国、都、区の3つの学力テストは学力向上につながるどころか、テスト対策のためにあらたな授業も行わなくてはならず、こどもや教師を疲弊させています。差別と選別を生み出し、テスト産業の利益誘導でもある学力テストは中止すべきです。
 わが党区議団は、子どもや学校関係者の強い願いを受けとめ、小中学校の普通教室にクーラー設置を求め続けてきました。しかし、山田区政は、室温が40度近くになろうが、具合が悪くなって保健室に運ばれようが「我慢も教育のうち」として、最後まで拒否しつづけてきました。学校保健法の規定を無視した非人間的な姿勢は許されません。
 区内教職員の5人の現職死は大きな衝撃です。パソコンの押しつけに加え、学力テスト・体力テストなどに手をとられる時間が多く、残業した後も自宅に帰って仕事をするのが日課となっています。教職員の残業時間など労働実態を把握せず、超多忙化を放置している区の姿勢は認められません。

 最後に平和施策について述べます。
 当該年度はオバマ大統領がチェコ・プラハで核なき世界構想を提唱したことを契機に、一気に核廃絶の機運が高まった年でした。しかし、山田区長はこうした世界の流れにく汲みせず、リーダーシップを示したとは言えませんでした。原水爆禁止署名運動発祥の地の首長としてふさわしくない姿勢でありました。今後、核廃絶、国際交渉の前進へ寄与することを求めます。

 以上の理由から、認定第1号平成21年度杉並区一般会計歳入歳出決算、認定第2号杉並区国民健康保険事業会計歳入歳出決算、認定第3号杉並区老人保健医療会計歳入歳出決算、認定第4号杉並区介護保険事業会計歳入歳出決算、認定第5号杉並区後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算の認定に反対します。
 なお、来年度予算編成の時期を迎えています。わが党区議団は、区民から寄せられた要望を反映し、524項目の予算要求を区に提出しました。一つ一つの実現を求めます。
 最後になりましたが、たくさんの資料請求に応えていただいた職員の皆さんに感謝を申し上げ、意見の開陳を終わります。