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2011年第3回定例会 一般質問(防災まちづくりについて)全文

 日本共産党杉並区議団を代表して、防災まちづくりについて質問します。
 
 3月11日の東日本大震災は、巨大地震と津波、さらに東京電力福島第一原発事故による被害が加わり、日本の歴史の中でも未曾有の大災害となりました。あらためて亡くなられた方々への哀悼と、被災された方々へお見舞いを申し上げます。杉並区は災害時相互援助協定を結んでいる福島県南相馬市に対し、職員の派遣など支援をおこなってきました。9月2日に行われた防災シンポジウムでは南相馬市の桜井市長が感謝の言葉を幾度となく述べられておりました。杉並区のこうした支援をはじめ、さまざまな分野での多くの人々の献身的な救援の取り組みに心から敬意を表するものです。
 
 災害発生からまもなく半年が経過しようとしていますが、民主党政権の対応は当然行うべき救援の手立てがあまりに遅く、とりわけ生活と生業の基盤回復に本格的に乗り出す姿勢が見えません。そうしたなか、多くのみなさんは、心身ともに苦しみ、先が見えない不安のなかで日々を過ごされています。福島原発事故は、チェルノブイリ事故と並ぶ世界最悪レベルの過酷な事故となり、いまだ収束の見通しがたっていません。放射性物質の拡散は、原発からの距離にかかわらず、健康に対する不安はもとより、県内各地の農林水産業、工業、商業、観光などあらゆる分野への風評も含めた被害を拡大させています。特に子どもへの影響は深刻です。「外で遊べない、走り回れない」大切な子ども時代をうばわれた福島の子どもたち。私の故郷、福島県会津は原発地域から約100キロ離れていますが、この夏帰省した際、小学生の子どもを持つ友人は福島を離れるべきかどうか悩み、農家の人は今年収穫の米に放射能が検出されたらお先まっくらだと不安を訴えていました。「福島はこれからどうなるのか!」暗たんたる思いです。安全神話をふりまきながら、わが党や市民団体のくり返しの警告を無視して何の安全対策もとらず原発を推進してきた歴代政府と東京電力に対し、私は、強い怒りを持ってすみやかな対策と補償、そして原発からの撤退を求めるものです。
 
 大震災と原発事故は、日本国民が、今後、長期にわたって正面から取り組み、その力を総結集して打開を図らなければならない国政最大の問題です。日本共産党は災害発生直後から震災募金やボランティアなどにとりくむとともに、政府に対しは、ひとりひとりの被災者が、破壊された生活の基盤を回復し、自分の力で再出発できるように支援することこそ復興の最大の目的であり、そのための公的支援を行うことが国の責務であること。復興の進め方については、「計画をつくるのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」を原則にすべきであり、被災地の実情を無視した上からの青写真の押し付であってはならないと提起してきました。被災された方々に安心と希望の持てる生活が1日でも早く訪れるように、引き続き全力をあげて取り組む決意です。

 さて、今回の大震災、巨大津波、原発危機は、私たちが暮らす社会にとって、何にもまして大切なものは命とくらしであり、それを守ることが政治の根本課題、使命であることを示したのではないでしょうか。先日も台風12号によって多くの犠牲者が出ました。〝災害大国〟ともいえるわが国では、防災=災害に強いまちづくりを行政の土台にすえ、取り組むことが最重要課題となっています。
 東京でもいつ巨大地震がおこってもおかしくないといわれてます。それだけに、住民は「自分たちの地域であのような地震がおきたら大丈夫なのか」と不安を強め、震災対策への意識も高めています。今年7月に発表された区民意向調査は、昨年調査したものですが、区が強化すべき課題の第一は防災対策となりました。避難態勢や帰宅困難者対策、飲料水や食料など備蓄品の拡充など地震がおきたときの対策はいうまでもなく重要ですが、被害をいかに最小限にとどめるのか、「減災」という視点で、杉並区が区民の命をまもる防災福祉都市づくりに全力を尽くすよう求めます。
 
 具体的な課題についてうかがっていきます。
 まず、震度の測定結果と対策についてです。
 震災対策を考えるうえで重要なことは、どのような地震と災害を想定するのかということです。東日本大震災はこれまでに経験したことのないマグニチュード9,0という巨大地震でした。この経験をふまえ、最大限の地震、最悪の事態を想定し対策をとることが必要です。
 その点で、現在の杉並区地域防災計画では、都の想定にもとづいて多摩直下型地震を想定し、区内の震度はどこでも一律6弱を前提とした被害想定がたてられています。しかし、東日本大震災を受けてこれでいいのか。また、区内全域を一律の震度で想定することが適正かということを提起したいと思います。3月11日の区内の震度は、区役所は震度5弱でしたが桃井の荻窪消防署は5強でした。さらに注目すべきことは、東京ガスが測定した区内63か所の測定結果で、5強を探知した観測点が多数ありました。
 そこで、まず、東京ガスが測定した区内63か所の測定結果のうち、5強は何か所で主にどの地域だったのかうかがいます。
 横浜市では、市のホームページで東京ガスの測定結果を公表しています。区としても区民への情報提供を検討すべきと思いますが、見解をうかがいます。
 わが党区議団は、第2回定例会でも想定震度の引き上げを求めました。東京ガスの測定結果をみても、やはり見直しが必要と考えます。その際、国や都の見直しに留意するとともに、単にその引き写しでなく、杉並区の現実に立脚することが重要と考えますが見解はいかがでしょうか。

 23区の中で、震度5強の測定結果が多かった地域は、足立区、江東区、江戸川区など主に東部地域でしたが、それ以外で最も多かったのが杉並区でした。それとともに注目すべきことは、杉並区の建物一部倒壊件数が651件と区部で最も多かったことです。2番目に多かった足立区は526件、3番目の練馬区は353件でした。
 東京ガスの測定では、上井草、井草、善福寺などの地域は多くの箇所で5強が観測されました。屋根瓦が崩れ落ち、ビニールシートがかけられたままの家屋が半年たった現在も多数残っています。しかし、それらの地域は東京都の地域危険度測定調査では、最も危険度が低いランクになっています。
 この結果を区はどのように分析しますか。
 危険度は東京都の責任で策定し公表したものですが、今回の結果もふまえた最新の危険度を調査・策定するよう都に求めるべきではないのか、見解をうかがいます。
 区内のどの地域が安全でどの地域が危険かということを単純に色分けすることはできませんが、震度も高く、軟弱な地盤となっていることが明白な地域には、それにふさわしい対策の強化が求められていると考えますがいかがか、答弁を求めます。

 水道、下水道などの生活インフラは巨大地震に備えたものとなっているでしょうか。都議会でも議論になっていますが、たとえば下水道のマンホールで、耐震化された数は数パーセントと聞いています。都は一気に整備できないから、避難所周辺から整備を進めていくとしています。
 杉並区内の下水道のマンホール総数と、耐震化された総数はどうなっているでしょうか。避難所周辺は当然としても、それにとどまらず整備を急ぐよう都に要請すべきではありませんか。
 東京都は「高度防災都市」をかかげながら、東日本大震災を受けて発表した「新たな戦略」には、都民の生命、財産を守るという言葉は一言もなく、もっぱら首都機能の維持・確保のみで、環状高速などを引き続き最優先で進めることを強調しています。しかし、上下水道などの生活インフラの耐震強化こそ最優先で財政を投入すべきであることを区としても都に求めるべきではありませんか、見解を求めます。

 阪神・淡路大震災では、犠牲者の約8割が建物・家具類等の倒壊による圧迫死でした。地震時の被害を最小限に抑えるには建物の耐震化が最も有効です。全国でも静岡県、横浜市等が積極的な取り組みを行っています。耐震化の遅れで建物の倒壊した場合、仮設住宅の建設はじめ巨額の費用がかかりますが、そうした諸経費を考えれば、耐震化を促進した方が、経済的にも効果的との判断から手厚い助成を実施しています。
 区は2008年3月に「杉並区耐震改修促進計画」を策定し、2015年度までに区内の全建築物の90%以上を耐震化する目標を定めました。そのために自然更新や増加分以外に10年間で3200棟の耐震改修を誘導するとしています。残り4年半となりましたが、現時点で誘導分は何戸実施されたのかお答えください。また、最新の耐震改修率の到達は何パーセントでしょうか。
 区は、2005年から耐震診断・耐震改修の助成を始めました。2009年には耐震改修助成の対象を、従来のIW値1,0以上だけでなく、1,0以下にも減額して助成することとしました。それによって、他区と比べても実績が高いとしています。そうした取り組みは評価するところですが、しかし、これまでの延長線上では、区自らがたてた目標に達しないのではないでしょうか。現状と対策をどのように考えているのか、おうかがいします。
 横浜市は、東日本大震災を受けて、耐震改修を促進するために、3年間の限定措置として助成額を75万円引き上げ、一般世帯225万円、非課税世帯300万円に引き上げました。また、以前から進んでいる静岡県では、高齢者世帯の改修意欲を引き出すために、高齢者世帯への加算措置をとっています。23区のなかでも、新宿区などが低所得者や高齢者加算を行っています。高齢者は「この先何年いきられるかわからないから」、低所得者は「費用がかかるから」と耐震改修に消極的です。杉並区の助成額は現在100万円ですが、耐震改修率を引き上げていくために、助成額のさらなる引き上げ、高齢者世帯や非課税世帯への加算など、検討すべきではないでしょうか。また、情報提供や手続きの簡易さも求められていますが、区としてどう努力していくのか、うかがいます。

 大地震で心配されるのが火災の発生です。特に杉並区は木造低層住宅地域を中心とした地域特性があり、大地震の火災対策は特別に重要と地域防災計画でも述べられています。建物の不燃化促進はとりわけ力を注ぐことが求められます。区では、これまで蚕糸の森公園や馬橋公園周辺、天沼3丁目地域、環状7・8号線の沿道地区等で不燃化助成事業を行ってきた結果、H18年度の土地利用現況調査では44%となりました。現在は、阿佐ヶ谷・高円寺地域で不燃化のまちづくりが進められています。
 区内の木造住宅密集地域において取り組みが進められていますが、そうした地域の不燃化は住民の合意も必要で長い年月がかかります。その間の努力とともに、一戸一戸の住宅の耐震化、燃えにくい構造にする不燃化の促進、消防活動を円滑に行うことができる環境整備など、火災に迅速に対応できる防災対策の推進が急務であると考えますが、どのようにお考えでしょうか。

 地震による火災の拡大から区民を安全に保護するための避難場所の確保・整備も重要な課題です。しかし、大都市ではオープンスペースの確保はむずかしい問題で、杉並区で指定されている避難場所は18か所ありますが、地域によっては避難場所までかなり遠いところもあることは、区自身も地域防災計画のなかで述べています。
 避難場所まで遠い地域の解消に向けて、区は今後どういう努力をしていくのか、答弁を求めます。

 東日本震災を目の当たりにし、高齢や障害などで、災害時に避難することが困難ないわゆる災害弱者といわれる方々は、「正確な情報を受け取ることができない」「自分の意思を伝えられない」「パニックに陥ってしまう」「避難場所まで移動できない」など不安を高めています。わが党区議団はこの間、区内の障害者団体と個別に懇談を行っていますが、そのなかでも災害時の対応の強化を求める声が寄せられています。要援護者への支援体制の構築は急務です。
 現在、区は、要介護の高齢者や障害者、難病患者、災害時に支援を必要とする人を対象に「地域のたすけあいネットワーク」の拡充・強化に取り組んでいます。内容は①「災害時要援護者原簿」を作成し、「登録者台帳」への登録を勧奨すること、その台帳を平常時から民生児童委員や警察署、消防署、消防団分団及び震災救援所運営連絡会に提供し状況把握に活用する、②安否確認や避難支援を行うため、震災救援所運営連絡会で「避難支援計画」策定の支援、③民生児童委員による登録者の「個別避難支援プラン」の作成推進、登録者ひとりひとりの状況に合わせたきめ細かな支援の充実を図るというもので、2010年度まで区内全震災救援所地域で推進するとしています。
 これまでの取り組みの進捗状況はいかがでしょうか。また、東日本大震災を受けて、あらたな課題や必要な対策について、災害弱者といわれる人たちの不安にどう対応していくのか、おうかがいします。
 また、障害者団体から、備蓄品の拡充を含め、区内の福祉施設や作業所を指定避難場所・二次救援所、福祉救援所として認めてほしいとの要望が出ていますが、区の見解をうかがいます。
 
 以上、区の明確な答弁を求め、私の質問を終わります。