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2018年決算特別委員会 意見開陳全文

 日本共産党杉並区議団を代表して、平成29年度杉並区一般会計ほか、各特別会計の歳入歳出決算について意見の開陳を行います。

 富裕層への富の集中が加速する一方、国民、区民の生活は深刻化しています。
 本決算年度直近の政府統計でも、労働者の平均賃金は1997年をピークに55万6千円も減少し、国民生活基礎調査でも、生活が苦しいと答えた人は60%に及んでいます。さらに、働きながら生活保護基準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、勤労者世帯の9・7%に拡大し、貯金ゼロ世帯は30%を超える事態となっています。
 わが党区議団が取り組んだ区民アンケートでも、くらしに関し「よくなった」と回答した人が3.9%に対し、「苦しくなった」は43.2%でした。そして苦しくなった主な原因の支出については、税金とともに、医療・介護費、保険料があげられています。
 こうした状況だからこそ、福祉の増進を基本使命とする杉並区の任務は、区民のくらしに光をあて、増大する区民の負担を軽減し、くらし、福祉、教育の向上のために全力をあげることです。
 わが党区議団は、そうした観点から、2017年度の各会計決算を認定できるか否か審議してきましたが、認定第1号杉並区一般会計決算ほか認定第2号から第6号までの特別会計決算の認定について反対します。以下、理由を述べます。
 
 第一に、区民への負担は軽減されないどころか、区が行ったのは、国民健康保険料の連続引き上げであり、区立施設使用料の引き上げでした。
 国民健康保険料は、低所得の被保険者が多く、保険料徴収は困難だと特別区長会も見解を表明しています。ところが、本決算年度は、金額・率ともに、この5年間で最大の値上げが区民に押しつけられ、年収300万円40代夫婦と子ども1人の世帯では、国保料は年額35万円余で、年収の1割以上の負担になりました。一方、質疑でも明らかにしたように、区の一般会計からの法定外繰入は前年度比20億円も減額しており、前年度と同額の繰入が行われていれば、保険料をあげる必要はありませんでした。
 また、区立施設使用料は2015年から始まった段階的引き上げの最終値上げが行われました。登録団体は、使用料の引き上げと2分の1減額措置廃止が同時に行われた結果、使用料がいっきに2倍以上引き上げられました。質疑でも紹介したように、「水中歩行の会を廃止することになった」という声が寄せられたことが「区政に関する意識と実態」に記載されています。
 
 第二に、区民生活を脅かし、区民の社会参加を抑制するような値上げをせざるをえないほど、区財政が切迫している状況だったのかという点です。
 決算報告でも明らかなように、歳入は前年度比121億円、予算現額比26億円も増え、実質収支比率は7・6%と拡大しました。これは23区平均の6・1%とくらべても高い水準です。この実質収支比率は、標準財政規模に対する実質収支の割合を示す指標で、一般的には、概ね3〜5%が適当と、区みずから「経営報告書」に記載しています。しかも、基金残高は、総額で523億円、うち財政調整基金は366億円になりましたが、これは2008年、平成20年以降最高の額です。これだけの黒字を出す財政力があるなら、区民施策の拡充にこそ回すべきであり、国保料や使用料の引き上げではなく、引き下げこそ行うべきでした。

 第三に、不用額の問題です。一般会計全体の不用額は60億円にのぼりました。執行率は96・7%ですが、事業別にみると、低所得者施策や高齢福祉分野で、執行率が7割にもみたない事業が多数あることは見過ごせません。
 例えば、災害や病気等で応急に資金を必要とし、他から借り受けることが困難な低所得世帯に無利子貸し付けを行う応急小口資金貸付事業の執行率は、わずか39・1%です。経年でみると、平成27年度70・8%、28年度43・6%と減少の一途をたどっています。
 また、要援護者に対するサービスの総合調整の執行率は、決算年度35・5%、前年度は24・0%です。高校生奨学資金貸付金の決算年度の執行率は71・8%でした。
 さらに、高齢者分野で、執行率が70%に満たない事業が7事業ありましたが、うち4事業は2年連続70%以下です。例えば、高齢者配食サービスは60・4%、高齢者24時間安心ヘルプは59・5%です。こうした高齢福祉分野で執行率の低い事業をみると、区が地域包括ケアの推進と位置付けている分野に集中していることも見過ごせません。区も重視し、在宅高齢者を支える重要な事業の執行率が低いという事態は、行政としての本来の役割が発揮されてないということであり、低執行率の問題を調査分析し、真に区民が利用できる施策に拡充をはかるべきです。
 また、介護保険事業会計でも、介護保険利用の給付費の不用額は約20億円で、介護予防サービス費は前年度比5億円の減、地域支援事業の不用額は約1億2千万円です。これは、軽度者の保険外しなどたび重なる制度改悪を行い、給付費削減を狙った国のもくろみがそのまま反映されたものと言わざるを得ません。こうした国の社会保障費削減路線に何ら意見をあげないどころか、ひたすら容認し続けてきた区の姿勢は問題です。
 全高齢者に保険料を負担させながら、保険給付を受けられなくする改悪には、介護保険制度の創設を主導した元厚労省高官も“このままでは、介護保険は「国家的詐欺」の制度になる”と危惧の声をあげています。介護保険の公的給付を際限なく切り縮め、利用者・家族負担を引き上げていく制度改悪に対しきっぱりと反対の意見をあげるとともに、区独自の施策拡充を図るべきです。

 第四に、区民の切実な声に耳を貸さず、強引な施設の廃止や統廃合を進めてきた点です。
 決算年度、区立施設をめぐる最大の問題は、荻窪税務署との財産交換による、あんさんぶる荻窪、荻窪北児童館の廃止でした。これまで再三述べてきたように、財産交換は、事前に議会や区民への情報提供はなく、突然の区長のマスコミ発表から始まり、存続を求める住民や利用者の声は全く無視され、説明会さえも一度も開かれないなど、一貫して区長のトップダウン、住民不在で進められてきました。
 駅前の一等地に建設費だけで28億円かけ、まだ築14年というあんさんぶる荻窪は、区と区民が協働してつくったコミュニティー施設であり、子どもたちの大切な居場所でしたが、廃止によって、地域住民や利用者から「あんさんぶる荻窪がなくなり、荻窪5丁目より公園がないので、子どもが家から出なくなり困っている」「おぎきた子どもプレイスに一度行ったらとにかく行きたがらなくなった」「集会室が減らされて会合を開く場所がない」などの声が寄せられています。
 児童館以外のあんさんぶるの機能を移すための複合施設棟ウエルファーム杉並と、学童クラブを桃井第二小学校に移すための前倒しでの改築費用に約70億円の支出は、あんさんぶる荻窪を廃止しなければ出さなくて済んだ費用であり、税金の無駄遣いにほかなりません。
 高円寺地域の小中一貫校問題でも、前代未聞の事態が発生しました。教育環境と住環境の見直しを求め、「巨大校舎反対」などのプラカードを掲げて抗議する近隣住民に対し、工事業者が恫喝目的で訴えただけでなく、住民説明会で参加者を盗撮までしていたことが明らかになりました。 挙句の果てに、事業者は、区の杜撰な手続きが原因で都の建築確認が4ヶ月遅れたことによる工事遅延の責任を近隣住民に擦りつけました。重大なのは、こうした工事業者による一連の人権侵害行為や責任転嫁を、区が「事業者が必要と判断したもの」と容認してきたことです。
 区の教育ビジョンにもうたわれているように、学校づくりにおいて地域住民との協働は欠かせないものですが、高円寺地域の小中一貫校建設は、住民の住環境を蔑ろにし、恫喝や人権侵害行為を繰り返すなど異常極まりないものです。
 区立施設の問題で共通していることは、計画先にありき、住民無視の姿勢です。多くの区民から計画の見直しを求める声が寄せられても全く耳をかさず、計画が強行されています。杉並区自治基本条例では、区民参画の保障がうたわれ、計画の立案から決定、評価に至るまでその過程に主体的に参加し、意思決定にかかわるとされていますが、田中区長の区政運営は、自治基本条例の理念からも遠くかけ離れるもので、容認できません。
 
 以上、本決算の全体的な問題点について意見を述べましたが、そのうえにたって、委員会質疑で指摘した個別事業の問題点や改善提案に対し、区が真摯に取り組むことを求めるものです。

○国民健康保険料について
 区は東京都の国保運営方針に基づき、一般会計からの法定外繰入を6年かけて段階的に縮小、廃止しようとしていますが、繰入がなくなれば今でさえ高い保険料が大幅値上げとなり、区民生活はますます困難に追いやられることになります。先の予算特別委員会で、法定外繰入廃止に法的な縛りがないことは、区自身が認めています。国に対し、引き下げてきた国庫支出金の割合を引き上げ、東京都にもさらなる財政投入を求めるとともに、一般会計からの繰入を縮小廃止ではなく増額し、すべての加入者が無理なく払える保険料に引き下げるべきです。
 また、わが党区議団が条例提案し、継続審議となっている多子世帯の均等割り額の負担軽減についても、実施に踏み出すよう求めます。

○施設使用料について
 質疑のなかで、杉並区の使用料が他区と比べて2倍、3倍に高くなっている原因が、施設の性格を考慮せず原価を100%区民負担とする算定方法にあることを明らかにしました。区が、他区も参考にし、施設の種別に使用料負担を検討する旨の答弁をしたことは重要です。所得にかかわらず、すべての区民が等しく施設を利用する機会を保障するために、他区の先進事例の取り組みも調査し、5割減額などの導入を求めます。
 
○就学援助の認定基準について
 10月からの生活保護基準引き下げに連動させることのないよう改めて求めておきます。準要保護世帯の入学準備金について、都区財調の算定単価見直しにより、杉並区でも来年度から引き上げの方向が示されたことは重要ですが、23区で比較してみると、すでに多くの区が増額しており、なおかつ国基準以上の区も見受けられます。入学準備に際して実際にかかる費用は、これで十分というわけではありません。今後も実態にみあった額に近づけるよう求めます。
 高校生奨学資金貸付金について、不用額のところでも触れましたが、決算年度の執行率は71・8%です。利用しずらいということではないでしょうか。台東区、文京区などでは、貸付でなく、給付型の奨学金実施に踏み出しています。区としても、給付型の奨学金制度の創設をぜひ検討すべきと求めます。

○学校施設整備について
学校トイレの洋式化については、今年度は予算を増額し、新たに3校の洋式化を図りましたが、それでも23区平均以下の洋式化率です。
 質疑のなかで、区教委自身、児童生徒から洋式化促進を求める声が寄せられていることを繰り返し述べていました。わが党は、年度計画の目標をもって洋式化率を一気に引き上げた他区の取り組みを紹介しましたが、区としても、年度目標をもち、早急に洋式化を進めるべきです。
 学校体育館へのエアコン設置については、改築時の設置が中心で、既存のかまぼこ型式の体育館は後回しになっています。区長は自らの選挙公約に掲げていたにも関わらず、区長会で補助制度を求めているというだけで、積極的な姿勢が見られませんでした。
 トイレの洋式化、体育館へのエアコン設置など、学校施設整備の促進は、児童生徒の教育環境の向上に留まらず、災害時の救援所としての機能強化という観点からも重要であり、優先課題として取り組むよう求めます。

〇施設再編問題について
 第一次実施プランで出された児童館全館廃止方針が、第二次実施プランでも進められようとしています。児童館は、遊戯室、図書室、音楽室など多彩な機能があるからこそ様々な遊び方、過ごし方を子どもたちに提供できています。児童館施設自体が廃止されれば、放課後等居場所事業を小学校内で実施したとしても、こうした遊び方、過ごし方が出来なくなる、あるいはまた、不登校や何らかの事情で学校には行けない子どもたちの居場所がなくなる、などの懸念が指摘されています。児童館施設の廃止方針は見直し、すべての児童館の存続を強く求めます。
 ゆうゆう館を地域コミュニティ施設へ一体化する方針が示されましたが、高齢者の活動拠点としての機能後退や、利用しずらくなるのではないかとの懸念の声も上がっており、現状のゆうゆう館機能を後退させることのないように求めます。
 区立施設は、区民の社会参加や活動の拠点となるべき施設であり、区民の大切な財産です。再編整備計画策定にあたっては、住民説明会やパブリックコメントに寄せられた声を吸い上げ、計画に反映するようあらためて求めます。

 次に、質疑のなかでの区の見過ごせない答弁について発言します。
 昨年の都議選にむけた練馬区の民進党候補の決起大会に区長が出席し挨拶したことについて、理事者は公務と答弁しました。しかし、公務と判断できる判例はなく、苦し紛れに援用した大阪府交野市長に関する判例は、あくまでも首長選挙の場合です。しかも府下の20市長も参加したなど、具体的な事実認定のもとで儀礼的範囲と限定するものです。他自治体の1都議会議員候補の決起大会に参加することを妥当とする公的判断がないにもかかわらず、公務と断定する答弁は許されません。
 また、区長、副区長の区の利害関係者とのゴルフについてですが、国家公務員倫理法にもとづく倫理規定では、ゴルフを禁止し、地方公共団体もこの法及び規定に則ることが義務づけられています。しかし理事者は、区の職員が利害関係者とゴルフをすることは禁止されていると明言しませんでした。これは法令から逸脱した答弁といわざるをえません。
 こうした理事者の答弁は、法令等にもとづく厳正な判断ではなく、あくまでも区長の行動や主張をひたすら擁護しようとする態度といわざるをえません。たとえ区長の行為であっても、公務員としての公正な対応をとることを求めます。
 
 最後に、区長の発言について述べます。わが党の質問は、法令、判例等を研究し、それにもとづいて区長の行動について、問題提起を行ったものです。にもかかわらず、区長の答弁は法令上、判例上の解釈もなく、かつわが党が難癖をつけているかのように勝手に捻じ曲げて答弁を続ける態度が繰り返されました。こうした態度は改めるよう強く求めます。

 以上、意見を述べてまいりました。最後に、多くの資料を準備していただいた職員のみなさんに厚くお礼を申し上げ、意見開陳を終わります。