議会質問

HOME > 議会質問 > 2020年第1回定例会 一般質問「気候変動への対応について」「ジェンダー平等について」全文と答弁

2020年第1回定例会 一般質問「気候変動への対応について」「ジェンダー平等について」全文と答弁

 日本共産党杉並区議団を代表して、気候変動への対応について、ジェンダー平等について質問します。

 まず、気候変動への対応についてです。
 代表質問でも述べましたが、日本共産党杉並区議団は、昨年末、「地球温暖化対策抜本的強化への提言」(以下「提言」といいます)を区長に提出しました。その後の調査などで明らかになったことも踏まえ、質問します。
 
 第1は、温暖化の進行という今日の事態を、区長としてどう認識して対応しているのかということです。特に私が強調したいのは、気候変動をめぐる深刻な事態は、人類の未来を左右するとともに、すでに、私たちの命と安全を脅かす事態になっていることです。
 とりわけ東京では、気候変動とヒートアイランドの2重の影響で、140年間に平均気温は3.2度と、世界平均の3倍も上昇が進行しており、猛暑の連続など、生活と健康に深刻な影響をもたらしています。
 また、杉並区にとっても重大な豪雨発生の増加も、地球温暖化が影響している可能性があり「温暖化が今後進行した場合、さらに大雨の発生は増加する」と国土交通省は警告しています。昨年の台風19号に見られる急速な巨大化も「海面温度上昇の影響」と指摘されています。 

Q 地球規模の気候変動が、私たち区民の命と安全にもかかわる重大で深刻な問題との認識を明確にし、区民にも情報提供を行い、区としての対策を抜本的に強化すべきと考えますが、いかがですか。

第2は、杉並区の役割に関してです。区長は、国レベルの取組の必要性は言うまでもないといいつつ、一人ひとりが問題を認識し、行動していくことが重要だと発言しましたが、そのためには、国とともに、自治体が責任と役割を自覚し、取組むことが求められていると考えます。
 地球温暖化対策の推進に関する法律も、第4条で地方公共団体の責務を定め、その区域の条件に応じた温室効果ガス排出抑制の施策を推進することを定めています。

Q 全国では、京都市や柏市で「地球温暖化対策条例」を制定し、事業者、住民ぐるみの取組を推進しています。23区でも、千代田区、中野区などが条例を制定し、さらに地球温暖化対策推進法にもとづいて、温暖化の影響を分析し、詳細な対策を策定して取り組んでいる事例があります。
 しかし、杉並区の場合、区としての位置づけや削減のための具体的対策など、他区にくらべ不十分な印象をぬぐえません。
 区は、温暖化抑制のうえでの責任と役割をどう認識し、推進しようとしているのですか。

A 気候変動の対策や温暖化抑制に対する区の役割等に関するご質問のお答えします。
 地球温暖化等の問題は区民生活等に直結すると同時に、一人ひとりが原因者ともなっているとの意識をもって環境に配慮した行動をとるよう、区民参加の機会拡大や的確な情報提供を行っていく必要があると考えております。
 環境対策に関する区の役割は、区内の最大の温室効果ガス排出者としてその削減に取り組むことは当然ですが、区民等に環境への意識を高めていただき、共に地球温暖化対策等を進めることにあると考えております。そのためにも、区民等が危機を実感できるようわかりやすくデータ等を活用した周知、啓発活動を図ってまいります。

 第3は、代表質問でも強調した温室効果ガス削減目標についてです。異常な気候変動への対応で問われていることは、地球規模の温暖化にどうストップをかけるかであり、そのために必要な削減目標を明確にし、かつそれを裏付ける計画をもって取り組むかどうかです。

Q ところが、杉並区の地球温暖化対策実行計画では、「杉並区独自の削減目標については、次期環境基本計画を策定する際に、改めて検討することとします」となっています。これは電力量に占めるCO2発生量の変動を理由にしていますが、他区とくらべ異例の対応です。しかも、都の計画である温室効果ガスを2030年度に2000年度比30%削減すると一応掲げながら、併記している二酸化炭素排出量の削減目標は、2005年度から2021年度の16年間でわずか3.8%です。あまりにも不整合な目標設定であり、区の姿勢が問われる設定ではありませんか。区の認識をうかがいます。

Q 目標検討は、次期改定時では2021年度になります。グテレス国連事務総長は「あと数年のとりくみが正念場」と指摘しています。切迫した事態への対応が求められており、改定時をまたずに策定すべきです。いかがですか。

A 二酸化炭素排出量等削減目標についてのお尋ねにお答えします。
国は、平成25年度に二酸化炭素排出量の削減目標を平成32年度までに平成17年度比で3.8%減と下方修正しました。
 区の平成25年度の二酸化炭素排出量も平成17年度を上回っていたことから、区にも目標と合わせたものです。一方、長期目標は、排出削減の技術革新が見込まれ、区としても努力を講じていくために、都の目標を横引きしたものです。
 次に、早期に目標設定をとのことですが、この間の国全体の二酸化炭素排出削減の大部分は、産業部門、運輸部門によるものです。区の排出量の大部分は家庭等の民生部門から発生しているという現状を踏まえると、まずは区民等の十分な理解を得、その上で適切な目標を設定してまいります。

Q 目標についてですが、東京都は昨年12月に「IPCC1.5度C」特別報告をうけて、2050年度にCO2排出量を実質ゼロにするという「ゼロエミッション東京」を発表しました。杉並区はこれをどう受けとめ、対応するのですか。
 
A「ゼロエミッション東京」に関するお尋ねですが、この取組は、社会全体を「脱炭素化」へ転換することを目指して、省エネ・再エネの推進、気候変動への対応、プラスチック削減などを行うものと認識しています。これらの取り組みは区の施策と軌を一にするものであり、今後、都の補助等も最大限活用し、区民や事業者とも連携を図りながら、しっかりと取り組んでまいります。
 

 第4は、目標をどう具体化するのか、目標の実現をどう保障するのかという問題です。温暖化ガス削減目標を責任をもって達成するためには、その裏付けを明確にすることは当然のことです。

Q ところが、区の計画を見ると、部門、分野ごとの削減目標が定められていません。杉並区の事務、事業における削減計画でも、削減目標はありませんでした。なぜ部門別目標を設定しなかったのですか。それでどうやって全体目標が達成できるのですか。
 他区の計画を見ましたが、12区では部門別の削減目標をもっていました。ある区の場合、削減比率でなく家庭、産業、業務、運輸など部門別のCO2削減量を何十万トンという数値で示している例もありました。区として、目標設定と一体に部門別削減目標を設定すべきです。いかがですか。

A 次に、二酸化炭素排出量における部門別削減目標に関するお尋ねですが、区の場合、二酸化炭素排出量の多くは家庭部門を中心とした民生部門によるものであることから、家庭部門の排出削減に向けた取組を行うことで、区全体の排出量の削減につながると考えたものです。時期の削減目標設定に当たっては、エネルギー技術の進捗状況等に伴う産業部門や運輸部門に対する要請事項の内容などを検討し、環境清掃審議会などの意見を踏まえて、部門別目標の設定等についても検討してまいります。 
 

 
 区長は、予算編成方針で、グレタ・トゥンベリさんを紹介しましたが、彼女の発言で印象的だった発言の一つは「一番危険なのは、行動しないことではなく、政治家や企業家が行動しているように見せかけること」との発言です。私たちは、この指摘をしっかり受けとめるべきと思います。
 
 第5に強調したいことは、CO2の削減、過剰なエネルギー利用の抑制と一体に、いかに再生可能エネルギーへの転換を促進していくかです。これは、原発ゼロを進めていく上でも重要課題です。

Q 杉並区は「環境基本計画」で、震災救援所となる小中学校で太陽光パネルや蓄電池の設置をすすめていますが、区立小中学校を含む区立施設の太陽光発電における年間の発電量はいくらか、お答えください。
 練馬区では「自立分散型エネルギー社会に向けて」と題する「エネルギービジョン」を策定していますが、計画も施策もより全面的に示されています。区は今後、自立分散電源の確保、再生可能エネルギーの創出をどのように進めていくのですか。
 この点で、世田谷区の取組は参考にすべきと思います。環境省が「地方公共団体実行計画に関する説明会」で紹介した事例ですから、区も承知と思いますが、世田谷区は、友好自治体である群馬県川場村と連携し、間伐材による木質バイオマス発電所を設置し、その電力を区内の一般家庭で利用しています。また、長野県高遠での水力発電を区立保育園41園で利用するなど、友好自治体と連携して再生可能エネルギーの創出を促進し、世田谷区に供給する努力をしています。江東区でも、東北の復興支援と結んで石巻市のバイオマス発電を活用する取組がされています。こうした取組を参考にし、区としても再生可能エネルギーの創エネの取組を強化すべきではありませんか。
 
A 自立分散型電源の確保及び再生可能エネルギーの創出等についてのお尋ねにお答えします。
 現在区では、杉並産エネルギーの創出と省エネルギーの推進を実行計画の重点施策として掲げ、区立施設の太陽光発電器等設置、太陽光発電システム等低炭素化推進機器等導入助成、電気自動車用充電設備導入助成等を実施しております。これはご指摘の自立分散型電源の確保等につながるものと考えております。今後も、災害時の電源確保の点からも自立分散型電源等は必要であり、今後の計画改定において更なる確保を目指してまいります。
また、バイオマス発電や、水力発電などの再生エネルギーを区で活用し、これをPRすることは、区民の環境意識を向上させることにつながるものと考えます。一方で、区内で生産した電力でない場合、途中の送電ロスや経費など効率性の点で課題もあり、様々な情報を収集し、研究してまいります。
なお、令和元年度の区立施設の太陽光発電における年間発電量については、約30万2千kWhと想定されます。

Q また、新宿区や豊島区などのカーボンオフセットの取組も参考になります。これは区有林・区民林などを確保し、そこで区民の自然体験、環境交流などの事業を展開するとともに、その森林で吸収するCO2を区内で発生するCO2とオフセット・相殺するというものです。 
 区長は、森林環境譲与税について言及しましたが、こうした事例も参考にできるのではありませんか。いかがですか。

A カーボン・オフセットの取組についてお答えします。これもCO2排出量削減のための有効策の一つと認識しております。今後、森林環境譲与税の使途について様々検討する中の一つの選択肢として研究してまいります。

 次に、温室効果ガス削減にむけた区としての具体的な取組について、他区、他自治体の取組から参考となる事例を紹介し、区としての取組強化を求めたいと思います。昨年末に提出した「提言」でも、他自治体の取組を紹介しましたが、今日の質問のため、議会事務局を通じて地球温暖化対策に関する23区の取組状況を把握しました。大変貴重な資料ですから区に提供しましたが、事項ごとに紹介し、質問します。

 まず、家庭部門です。
 杉並区でのCO2排出量の内訳は、他区と同様ですが、家庭分野が1位で52.6%を占めており、家庭部門での取組が重要となっています。
Q 区は、太陽光発電システムや、家庭用燃料電池システム・エネファーム、自然冷媒ヒートポンプ給湯器・エコキュート、窓断熱改修や高反射率塗装等への助成をしていますが、どれだけ利用され、普及しているのでしょうか。これらの普及促進を含め、今後、家庭部門での温室効果ガス削減の取組をどのように進めるのですか。

A 低炭素化推進機器等導入助成の取組についてお答えします。平成30年度までの累計は、太陽光発電システムは2,648件、家庭用燃料電池・エネファームは1,395件、自然冷媒ヒートポンプ給湯器・エコキュートは495件、窓断熱改修は94件、高日射反射率塗装は205件です。中でも太陽光発電システムは、区内戸建住宅への普及率が推計で5.7%程度となっています。これらの設置等による温室効果ガス削減効果に加え、環境への関心を高める効果もあると考えており、今後も継続してまいります。

Q 区で実施されてない助成制度で、住宅用エネルギー・HEMSは7区で、ゼロエネルギーハウズは2区で、雨水の貯水・利用設備は6区で行われています。検討することを提案しますがいかがですか。
 
A 住宅エネルギー等に関する質問にお答えします。区としても住宅用省エネ設備の整備を推進してまいりたいと考えておりますが、HEMSはこのシステムに基づき使用できる電気機器が限られていること、また、ゼロエネルギーハウスは建設経費が高く導入へのインセンティブとなる補助額が高額となること等が課題と考えております。雨水タンクは来年度から助成メニューに加えていくことを予定しております。今後も助成対象について、区民ニーズや補助効果の高いものへと不断の見直しを行ってまいります。

Q さらにマンション対策も重要です。
昨年末の提言で、共用部分でのLED化助成を提案しましたが、調査の結果8区で実施していることが確認されました。さらに、マンション管理組合への省エネコンサルタントの派遣も重要と思います。いかがでしょうか。

A 省エネに関するマンション対策等についてお答えします。マンション管理組合への省エネコンサルタントの派遣やマンションへの共用部分のLED化助成も、省エネ対策の手法と認識しております。これらに対するニーズや他の低炭素化推進機器に対する助成との効果等を比較しながら研究してまいります。
 
 
 さらに、区長も区民への情報提供に触れていましたが、区民が削減と節約の効果がわかるように情報提供することが重要と思います。

Q 例えば、区によっては「地球温暖化対策地域推進計画」のなかに「エネルギー消費の削減に向けた取組の効果」という一覧表を掲載しています。その表では、電気カーペットの設定温度を低めにすると、電力使用量は年間186キロワット減らし、電気代は年5020円節約することがわかります。こうした情報提供を強化すべきことを提案します。いかがですか。

A エネルギー消費の情報提供に関するご質問にお答えします。区では、現在、家庭向けに省エネの効果について周知がされている都のリーフレット等を窓口で供覧するほか、HP等で環境配慮行動等の周知を行っております。今後、これらを更に工夫して、数字等も活用し、より分かりやすい周知に努めてまいります。
 

 次に、業務・産業部門です。
Q 業務部門は24%で第2位ですが、杉並の場合は、事業所数で最も多いのは商店であり、商店や商店会への温室効果ガス削減に向けた支援が重要です。区はどのように認識し、取り組んでいくのですか。

A 温室効果ガス削減に向けた商店などへの支援についてお答えします。現在、区では、中小企業向けに太陽光発電機器設置等の低炭素化推進機器等導入助成や、商店街を対象に街路灯のLED化助成を行うなど、業務部門に対する温室効果ガス削減に向けた支援を行っています。
 今後も、これらの取組を進めるとともに、都における事業者向け無料省エネルギー診断など国や都の支援の周知に努め、他の自治体での取組なども参考にしながら、より効果的な事業等について研究してまいります。

Q 提言では、大規模小売店にCO2削減、省エネ計画の提出を求めることを提案しました。商店に対しては空調機や冷蔵庫の省エネ機への転換への支援、さらに省エネに積極的な事業者にたいする認定制度による支援も提案しました。どのように検討されたでしょうか。

Q 今回の調査でも、文京区の「持続可能性向上支援補助金」、豊島区の「エコ事業者普及促進費用助成金」制度など、省エネ診断にもとづいて、機器を更新する際の費用の一部助成が実施されていることがわかりました。検討に値いすると思いますがいかがですか。

A 大規模小売店のCO2削減等に関するご質問にお答えします。
大規模小売店については、エネルギーの使用の合理化等に関する法律や、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例などにより、温暖化対策の推進等が求められておりますので、計画的にCO2の排出抑制が進められていると考えております。そのため、現時点では区独自の省エネ省エネ計画の提出等を求めることは考えておりません。なお、商店に対する空調機や冷蔵庫の省エネ機への転換への支援や、省エネに積極的な事業者に対する認定制度による支援等については、先行自治体の状況等研究してまいります。

 最後に、運輸・自動車部門です。
Q 運輸、自動車部門は全体の15%で第3位です。提言では、トラック、バス、タクシーなどの事業者にたいし、CO2削減計画を求め、低公害車への切り替えや、運転の改善を求めることを提案しました。どのように検討されたでしょうか。

A 運輸事業者に対するCO2削減の取組についてお答えします。
区内において、平成28年度の運輸部門のCO2排出量は、平成2年度に比べ6割近くも減少しており、これは自動車の性能向上と各業界内におけるCO2削減の取組努力によるものと考えております。区では、契約等による物品等の区への搬出入時には低公害車を用いることを求めており、また、区公式ホームページではCO2削減のためのエコドライブを推奨し、「エコドライブ普及推進協議会」へのリンクも貼っております。
こうしたことから、現時点で削減計画の提出を求めることは、考えておりませんが、今後も更なる運輸部門のCO2削減が進むよう、国や都の低公害車導入に関する助成等の周知に努め、機会を捉えて業界団体へ要請を行ってまいります。

Q また、CO2削減のためにも、電気自動車のための充電設備など条件整備に区が取り組むことが求められています。練馬区では、電気自動車用充電施設は11カ所14基で、うち9カ所9基が急速充電器となっています。杉並区の現状と今後の方向を明らかにしてください。

A 電気自動車用充電設備の整備についてのお尋ねですが、区が設置してる急速充電器は、1か所ですが、現在区内において、都公社1か所のほか、民間の充電設備15か所程度を確認しております。また、現在、区の充電設備の利用状況が横ばいであること等から、その原因等も確認し適切な対応策の検討をしてまいります。

次に、ジェンダー平等について質問します。
 いま、世界的にも日本でもジェンダー平等の動きが広がっています。
 ジェンダーとは、生物学的な性別に対し、社会が人々に押しつける「女性はこうあるべき」「男性はこうあるべき」などの社会的・文化的につくられた性差のことで、ジェンダー平等とは、そうした意識をのりこえ、対等な関係性をつくっていこうという考え方です。

 2015年、国連で採択された「持続可能な開発目標」SDGsは、2030年までに達成すべき17の目標の5番目に「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と少女のエンパワーメントを図る」ことを掲げ、「ジェンダーの視点」を据えることを強調しました。

Q 多くの国で、女性は、育児や介護、家事労働を担う存在としてみなされ、自立して能力を発揮することが妨げられています。法律や制度の上では一見「男女平等」となったように見える日本においても、働く女性の半分は非正規雇用で、政治参加が遅れ、自由を阻害され、暴力にさらされ、その力を発揮することができていません。そのおおもとにあるのがジェンダー差別です。女性だけでなく、男性も「男は会社に尽くし、妻子を養って一人前」といった規範が押し付けられ、過酷な搾取のもとに縛り付けられています。区長は、こうした実態について、どう認識していますか。

 ジェンダー平等は、女性だけの問題ではなく、人権問題そのものと言われています。女性が生きやすい社会は、男性にとっても、さらには性的少数者と言われる人たちにとっても暮らしやすい社会であるはずです。ジェンダー平等をめざすことは、あらゆる分野で、真の「男女平等」を実現するとともに、さらに進んで「男性も、女性も、多様な性を持つ人も、差別なく、平等に、尊厳を持ち、自らの力を存分に発揮できるようになる社会をめざす」ことだと考えます。

Q.杉並区として、SDGsに掲げられた「ジェンダー平等」の達成に向けて、区民生活や区のあらゆる事業の中にジェンダー平等を位置づけ、取り組みを強化する必要があると考えますが、区の認識をうかがいます。

A. 区では、平成9年に男女共同参画都市を宣言し、男女共同参画行動計画の基で、男女共同参画社会の実現をめざし、家庭生活や働く場におけるワークライフバランスの推進や地域における男女共同参画の推進などに取り組んでまいりました。
 しかしながら、いまだに性別による固定的な役割分担意識が根強く残っていると認識しております。これらが払拭され、すべての人が性別に係わらず等しく認められ、互いに尊重しあい自分らしさを発揮し活躍できる男女共同参画社会の実現に向け、区の様々な施策や事業の実施に当たっては、男女共同参画の視点を踏まえ、行動計画の目標達成に向けて取り組んでまいります。

 
 
 世界経済フォーラムが昨年12月に発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は前年の110位から順位を下げて153カ国中121位と、過去最低を更新しました。 
 安倍政権が掲げる女性活躍推進が進んでいないどころか、逆に男女格差が開いている現状が浮き彫りになりました。ジェンダーは、社会的・文化的性差と定義されてはいますが、それは決して自然にできたものではなく、多くが政治によって作られたものだと考えます。
ジェンダー平等社会の実現に向けて取り組むべき課題は多岐にわたりますが、今回は4つのテーマについて、区の認識をお聞きします。

 第一は、政策・意思決定の場への女性登用の促進についてです。
Q 「杉並区男女共同参画行動計画」によると、2017年度の杉並区の管理職に占める女性職員の割合は15.5%で、2021年度の目標は20.0%以上となっています。また、審議会等における女性委員の登用割合は34.4%で、2021年度目標は40.0%となっています。
 それぞれの直近の数値と、目標値の達成に向けて、どのように取り組みを図っているのかうかがいます。
 
A.女性管理職の割合につきましては、これまで女性の管理職や係長が講師となり、女性職員を対象としたキャリアデザイン研修や座談会の実施などを通じて昇任意欲の醸成に努めており、今年度は17.3%に上昇いたしました。
 また、審議会における女性委員の登用割合は、令和元年4月1日現在35.5%となっております。区では、目標達成に向けて委員改選期等の機会を捉え、積極的に女性を推薦していただくよう関係団体に働きかけるなど、女性委員の登用に努めております。

 第二は、選択的夫婦別姓についてです。
 夫婦同姓を法律で強制している国は世界で日本だけで、女性が改姓するケースが96%です。改姓は、通帳などの名義変更にかかる膨大な労力などをもたらします。選択的夫婦別姓は、別姓を選びたい人は別姓にできるというもので、同姓にしたい人にとってはこれまでと何も変わらず、不利益もおこりません。 国連の女性差別撤廃委員会からも、夫婦同姓の義務づけを見直すように、何度も勧告されています。

Q 選択的夫婦別姓を認める民法改正を行うよう、区として国に働きかけることを求めたいと思いますが、区の認識はいかがですか。

A.選択的夫婦別氏制度の導入に関する民法改正については、国が策定した男女共同参画基本計画において、国民意識の動向等を考慮し、司法の判断も踏まえて、検討を進めることとしていることから、引き続き、国の動きを見守ってまいる考えです。

 第三は、性暴力の根絶についてです。
 性暴力・ハラスメントの被害に声を上げる♯Metoo、声を上げた人を孤立させまいとする♯WithYouの運動が日本でも世界でも大きく広がっています。
 昨年3月に性暴力事件で無罪判決が相次いだことに抗議し、性暴力の根絶を求めるフラワーデモは、昨年4月から毎月11日に全国各地で取り組まれています。
 2014年度の内閣府の調査で、異性から無理やり性交された経験があると答えた女性は15人に1人。しかし、被害を受けた人のうち、警察に相談したのはわずか4.3%で、勇気を出して警察に届けても、落ち度を指摘されて傷ついたと話す被害者も少なくありません。また、被害を告発した人が逆にバッシングを受けるなど、許しがたい事態も起きています。誰にも相談しなかったという人は67.5%にものぼり、多くの女性が一人で苦しみを抱えていることが伺えます。性暴力の被害者は女性だけではなく、男性もいます。加害者は、面識のある人であったり、中には家族や親族のケースもあります。
 2017年、110年ぶりに刑法が改正され、性犯罪を被害者が告訴しなければ起訴できない親告罪から非親告罪にするなどの前進がありました。しかし、同意のない性交=強制性交であっても、被害者が拒否できないほどの暴行・脅迫があった、若しくは酒や薬、精神的支配などにより、抵抗できない「抗拒不能」の状態であったことが認められなければ犯罪にならないなど、大きな問題点も抱えています。今年は、刑法の見直しの年であり、強制性交等罪の「暴行・脅迫要件」の撤廃、同意要件の新設など、見直しが必要と考えます。
 性暴力、セクハラ、DVなどは、どれも重大な人権侵害であり、「被害者は悪くない」「相談を」というメッセージを社会全体で打ちだすことが大切です。

Q、被害に遭ったことを独りで抱え込まないように、相談機関の充実、周知徹底が重要ですが、相談体制は、現状どのような体制になっていますか。

Q 区のホームページでは、配偶者や交際相手からの暴力いわゆるDV被害者への相談支援の案内はありますが、性暴力被害者全般への支援ということも強調すべきではないかと感じます。
 豊島区のホームページでは、「性暴力の被害にあわれた方へ」というページで、「つらく苦しい思いをされましたね。今、こころやからだの調子はどうですか?」と被害者に寄り添った書き出しで、相談できる支援先の情報を「被害にあって間もないとき」と「被害にあってから時間が経過しているとき」にわけて紹介しています。DVに限らない性暴力全般に関する相談機関の周知徹底を求めますが、いかがですか。

A.男女平等推進センターの一般相談では、性暴力やハラスメントなど様々なご相談に応じており、配偶者等からの暴力に関するご相談は「すぎなみDV相談ダイアル}でも対応しております。
 性犯罪やDVなどの被害に遭われた方が、誰にも相談できず潜在化しないよう、相談窓口のリーフレットやカードを作成し、区立施設や大学、医療機関等に置くとともに、広報すぎなみや区公式ホームページなども活用し周知に努めております。

Q JKビジネスやAV出演強要など、子どもや若者が性被害のリスクにさらされています。
子ども・若者を性暴力の被害者にも加害者にもしないために、相談体制の充実、学校教育での性教育と幅広い啓発活動を強化するよう求めます。区の認識をうかがいます。

A.区では、「すぎなみDV専用ダイアル」を設け、いわゆるデートDVの相談にも応じており、また、若年層に対するデートDV防止の意識啓発のため、区内の高校等での出前講座を実施しております。
 小中学校における性にかかわる指導については、学習指導要領に基づき、児童・生徒の発達段階に即して、異性とのかかわり方や性情報への対処などについて指導するとともに、セーフティ教室を通して、犯罪被害から身を守る具体的な対応等について指導しております。
 

 
 第四は、多様な性的指向・性自認の人々への支援についてです。
 性的少数者の人を包括的に表す言葉として、LGBTという用語が使われ、日本でもこの数年で認知度は広まってきています。LGBTと一括りになっていますが、どちらの性を愛するかという「性的指向」と、自分自身がどちらの性と認識するかという「性自認」とは別のもので、性的関心のない人もいれば、揺れ動くという人もいて、性のあり方はグラデーションのように多様です。そこで、SOGIソジという言葉も使われるようになっています。ソジは、性的指向セクシャル・オリエンテーションのSOと、性自認ジェンダー・アイデンティティのGIの頭文字からつくられた言葉で、性的少数者の人も、異性愛者の人も、すべての人の多様な性的指向・性自認を認め合おうという意味で使われるようになっています。

Q 性の多様性に対する職員や学校教職員等への研修、区民への啓発、当事者等の専門相談窓口の設置など、区の取り組み状況をうかがいます。
 豊島区では、区として「多様な性自認・性的指向に関する対応指針」を策定しています。区でも、こうした指針の策定を検討してはいかがですか。

A.区では、性的マイノリティに関する正しい認識と理解が促進されるよう、令和元年度は、区民向けのリーフレットを作成し配布するとともに、啓発映画の上映と講演会を実施しました。また、区職員向けには、新任研修等では人権問題の一つとして継続的に知識の習得を図るとともに、性的マイノリティを取り巻く社会状況や職員に求められることなどを盛り込んだ専門研修も実施いたしました。
 相談窓口については、男女平等推進センターの一般相談において、性的マイノリティに関するご相談を受けており、適切に対応しております。
 学校教職員につきましては、人権教育研修や保健主任会において、性の多様性に対する正しい理解と認識を深める研修を実施しております。
 また、指針の策定についてのお尋ねですが、区では男女共同参画行動計画において、性的少数者
に関する理解促進に取り組むこととしており、指針等の策定に関しましては、他自治体の取組み等を参考にしながら調査研究してまいります。

Q さらに、他自治体では、多様な性自認や性的指向の方々への配慮や支援を行うことを条例に定めたり宣言を行っている自治体もあります。杉並区でも実施を検討するよう求めますが、いかがでしょうか。
  
A.多様な性自認や性的指向の方々への配慮や支援を行うことを定める条例、宣言に関するお尋ねですが、区では平成9年に「男女共同参画都市宣言」を行い、その中で「男女委が性別を超え、世代を超え、互いに個性や能力を尊重し」ていくことを謳い、その方針を明確にしております。さらに行動計画を策定し積極的に取り組んでいるところでございますので、ご指摘のような条例につきましては、現時点で制定する考えはございません。
 
 
 一昨年、私は、戸籍は男性・性自認は女性という方の相談を受けました。幼いころから身体の性と自認する性の違いに悩み、親からも疎まれ、親戚をたらいまわしにされてきたこと、周囲からも偏見の目で見られ、いじめ、差別を受け、何十回と転居をくりかえしてきたことなど、壮絶な半生に衝撃を受けました。この時の相談の主旨は、生活保護の医療券に記載されている性を、戸籍の性ではなく、自認している性に変更してほしいというものでした。柔軟な対応を求めましたが、法律で認められていないため変更はできませんでした。 
 普段何気なく目にする性別表記ですが、戸籍の性と自認する性が違う方にとっては、自分のアイデンティティーに関わる重大問題であることを痛感させられました。

Q 行政書類の性別表記について、国や都に対し、不必要な記載欄の削除を求めるとともに、区で新たに作られる申請書類について、不要な性別欄を設けないよう各所管に徹底することを求めますが、いかがですか。
 
A.性同一性障害の方等への配慮から、毎年度、性別表示の状況について、全庁的な調査を行い、不要な性別表示を行わない等の周知を図るとともに、必要な見直しを行っております。
 国や都など、他の行政機関の様式については、基本的に合理性があるものと考えておりますが、配慮を欠くような事例があれば、必要性の確認等を行ってまいります。

Q 最後に同性パートナーシップ制度についてうかがいます。
 同性パートナーシップ制度は、自治体に同性カップルであることを届け出ると、公営住宅の入居や病院での親族の立ち合いなどの際、親族同様の扱いを受けることが可能となる制度です。2015年4月に渋谷区で実現したのを皮切りに、2020年1月末現在は34自治体まで広がっています。性的少数者の権利保障として、区として支援できる施策であり、導入の検討をはかるよう求めます。区の認識をうかがいます。

A.同姓パートナーシップ制度については、法制度都の整合等の課題があるとともに、婚姻のあり方や家族観などについて区民の中に様々なご意見があるととらえております。引き続き、区民の声や他自治体の動向を注視し、調査研究してまいります。

 
 ジェンダー平等は、常に、私たち一人一人の認識や常識が問い直される問題です。私自身、生まれ育った過程で、知らず知らず自分の中にジェンダー差別や偏見を取り込んで来ていると認識しています。そして、その克服のために、常に学び、努力していかなければならないと、あらためて決意しています。
 女性も男性も、多様な性を持つ人々も、すべての人が自分らしく、その力を発揮できるジェンダー平等社会の実現をめざすことを呼びかけ、質問を終わります。