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2020年決算特別委員会 意見開陳(全文)

 日本共産党杉並区議団を代表し、令和元年度杉並区一般会計外特別会計の歳入歳出決算について意見を開陳します。

 本決算年度は、10月の消費税増税、年度末にかけては新型コロナウィルス感染症の拡大が区民と区内事業者を直撃しました。こうした未曾有の事態に対し、区民の命と健康、くらしと営業を守り抜くために、杉並区が、自治体としての責任をどう果たすのかが問われました。
 さらに、地球温暖化が人類の生存を脅かす危機的段階をむかえているもとで、杉並区が貴重なみどりの保全など温暖化対策のうえで、どう取り組むのかも問われました。
 わが党区議団は、これらの視点にたって、本決算の審査を進めてきた結果、認定第1号一般会計外、認定第2号から5号までの特別決算の認定について反対します。
 以下、その主な理由について述べます。
 
 第1は、区民生活、区内事業者を直撃した消費税増税を容認し、国保料の値上げなど負担増を押しつけたことです。
 景気が下り坂に入った時期に強行された消費税増税は、経済を急激に冷え込ませました。現在の日本経済の危機的な状況を招いた原因は、新型コロナウィルスの感染拡大だけでなく、消費税増税も影響していることは明らかです。わが党区議団は、増税が強行された後に区内商店331件から聞き取りを行いました。売上げが10%または20%下がった、増税分を価格に転嫁できておらず、収入が減ったなどの切実な声が多数寄せられ、消費税は下げるべき、または廃止をすべきとの回答が7割を超えました。しかし、区長は、税と社会保障の一体改革のためには、一定の負担増を伴うことは避けては通れないと消費税増税を容認、推進する姿勢を示しました。これは到底承認できるものではありません。
 国民健康保険料の均等割額は18年連続値上げとなり、その結果、年収400万円、40代夫婦と子ども2人の4人世帯の保険料は51万円余りとなりました。国は、この間、財政投入したと言いますが、杉並区の国保会計で見れば、都道府県化が実施された2018年度は、前年と比べ、国、都からの歳入が19億円減額となったことを区は認めました。さらに、区の一般会計法定外繰入れの縮小・廃止を進め、今後も保険料を引き上げようとしていることは、被保険者の生活をさらに困難に追い詰めるもので、許せるものではありません。
 
 第2に、コロナ危機のもとでの財政運営についてです。新型コロナウィルス感染症から区民の命と健康を守るための手立てを尽くすことは、区政の最優先課題であり、財政の面からも最優先でなければなりません。区も、「区政経営報告書」では「財政調整基金を躊躇なく活用することとし、時期を逸することなく必要な施策を適切に実施します」と記載しています。この間、新型コロナによる影響で、来年度の財政状況は非常に厳しい、全事業について検証する、見直しを行う等々の方針が示され、政策経営部長からは「思い切って施策の取捨選択、冷徹に実施効果を見極めて行っていく必要がある」との発言もありました。
 新型コロナ対策のためには、財政調整基金の活用だけでなく、既存の計画であっても、その必要性、緊急性について再検討すべきです。他自治体においても、足立区や世田谷区では庁舎等の改修計画の見直し、荒川区では再開発事業のホール整備の見直しなどが開始されています。
 しかし、杉並区では、本決算年度に都市計画道路補助132号線の事業認可を申請し、新型コロナの感染が拡大するなか認可を取得しました。コロナ禍の危機的状況のなかで道路整備が認可されたことに近隣住民は驚くとともに、区のやり方に不信を募らせました。
 本決算年度の道路費は、3年前の2016年度にくらべ、当初予算額で1、38倍、支出済額では1.27倍に増額しています。道路整備一般を否定するものではありませんが、感染症対策を最優先するなら、住民からも中止、見直しが求められている幹線道路の拡幅整備は見直すべきです。そうした努力をせずに、医療機関や学校、保育などの職員へのPCR検査に背を向けることは認められません。
 
 第3に、阿佐ヶ谷駅北東地区区画整理事業についてです。本決算年度に、区は、区画整理事業を認可し、実勢価格からかけはなれたといわざるをえない土地評価基準表を策定、さらに既存樹木の大幅削減を容認し、容積率の大幅緩和を盛り込んだ地区計画を決定しました。
 これまでの質疑で明らかにしましたが、この事業は、大径木だけでも127本ある既存樹木のうち、残すのは62本で半数以上を伐採するものです。これは、多くの区民の願いや「何人も、現存する樹木を保全するよう努めなければならない」と定めた杉並区みどりの条例第9条に反することは明らかです。
 絶滅危惧種ツミの保全に関しては、保全計画書でも、けやき屋敷の工事がツミの生息に影響することを認めざるをえませんでしたが、それなら、樹木の伐採も、巨大構造物の建設もそのための工事も認められるものではありません。計画書では、ツミの代替巣(だいたいそう)、替わりの巣を設置して営巣地を移動するなどの検討を行うとしていますが、それで保全できるとは思えません。
 
 第4は、新型コロナウイルス感染症への対応に関してです。感染症から区民の命と健康を守る責務を担う区の機関は保健所です。保健所職員の皆さんは、新型コロナウイルス感染拡大という事態にたいし、献身的な努力を果たしてきました。質疑のなかで、保健所職員は、年度末の3月から80時間を超える超過勤務の実態があったことが明らかになり、「管理職も非常に激務の中で働いている」と区も答弁しました。
 こうした事態の背景には、国の保健所統廃合の方針があり、杉並区でも保健所の再編と職員の削減が進められた結果であることは明白です。にもかかわらず、区が保健所再編に何の反省もなく「地域保健サービスの一層の充実と質の向上」のためと答弁したことは驚きです。
 さらに、今回の決算分析のなかで、本決算年度・2019年度の保健衛生費の執行額を5年前の2014年度とくらべると、人口は増加し、歳入、歳出総額も5年間に大幅に伸びているにもかかわらず、保健衛生費の執行額は減っていることが明らかになりました。この数値を見ても、本決算を承認することはできません。 
 
 第5に、児童館の廃止についてです。
 本決算年度は、高円寺北、高円寺中央、東原の3つの児童館が廃止されました。
 児童館は、事前登録は不要で、子どもたちが自分の意思で自由に来館して、図書室や音楽室、体育館などで遊ぶことができます。しかし、放課後等居場所事業は、事前登録が必要でビブスを着用しなければならず、小学生と未就学児の兄弟で遊ぶことができない、おやつの持ち込みもできない、日曜日は休業、体育館や図書室、音楽室などの利用にも制約があり自由に遊ぶことはできません。子どもたちの遊ぶ権利や文化芸術活動に参加する権利を保障するために、児童館を設置することは、区の責務ですが、そうした区の責務を投げ捨て、児童館の廃止を進めることは到底認められません。杉並区の児童館事業は他自治体と比較しても非常に優れたものであり、廃止計画は撤回すべきです。
 
 第6に、決算に関連して入札についても指摘しておきます。予算の執行にあたって、受託企業が公平、公正な入札によって選ばれることは大前提です。しかし2年前、学校芝生化維持管理支援委託事業の北ブロックにおける不正行為発覚を機に、ブロックごとの1位落札企業が、数年にわったって同一企業であることが、わが党の調査で明らかになりました。不自然であり、区に調査を求めましたが、区は不自然ではないという態度をとりつづけました。
 あらためて本決算年度において不自然な事態が改善されたのか否か確かめましたが、学校芝生の事業では、今年度の入札でもブロックごとの1位落札者はこれまでと同じ企業であることが確認されました。問題を指摘したにもかかわらず、何ら改善されてないことは残念です。しかも今回の質問で9年、10年にわたって同一企業が1位を取り続ける事例があることも浮き彫りになりました。さらに、造園関係の入札を調べると、ブロック別に同じ企業が通年で1位落札を続けるという事業は、学校芝生維持管理以外にも、公園等樹木管理委託、公共施設の樹木等維持管理委託、さらに街路樹選定委託をはじめ6事業に及んでいます。
 公正取引委員会は、談合が疑われる事例として「落札回数が均等になっている」「落札結果に何らかの規則性がみられる」ことを挙げていますが、何ら不自然ではないという区の態度事態が、きわめて不自然であることを指摘しておきます。
 
 以上、本決算の主要な問題点について意見を述べてまいりましたが、その上に立って、あらためて改善や強化を求めたい施策について述べます。
 
 まず、新型コロナ対策に関連して、PCR検査の拡充、区民、事業者への支援強化についてです。
 新型コロナは収束には程遠い状況であり、引き続き区政が取り組むべき最優先課題です。政府は、感染拡大防止と社会・経済活動の両立を強調していますが、両者を両立させるカギは、検査と医療を抜本的に拡充することです。新型コロナは、無症状の感染者を通じて感染が広がっていくという特徴があり、感染拡大を防止しコントロールするためには、無症状の感染者を把握・保護することも含めた積極的検査を行うことが肝要です。
 区が、区内4基幹病院への発熱外来の設置をはじめとして、PCR検査体制の拡充を図る取組みを進めてきたことは評価しますが、医療・介護、福祉、保育、学校などで働く、いわゆるエッセンシャルワーカ―への区独自のPCR検査については、現行の検査体制の圧迫や費用対効果などを理由に現時点では実施しないとしています。1人でも感染が発生した場合は深刻な事態を招きかねず、職員が安心して働くためにも、検査の実施を求めるものです。
 また、保健所職員の体制について、派遣や庁内での応援にとどまらず、恒常的な定員増に踏み出すこと、そのためにも保健所費を増額するよう求めます。
 申請の煩雑さや審査の厳しさ、インターネットを使えないなどの理由で、国の持続化給付金、家賃支援給付金等の申請に至っていない事業者が多数にのぼっていることが、商連などへの聞き取りで明らかになりました。こうした実態を調査し、対象となる事業者が給付にむすびつくよう、商工団体と連携しサポートするよう求めます。
 1店舗に3万円を上限として飛沫防止や消毒用品の購入費を支援する取組は重要でしたが、当初の想定3800店舗に対し、実際の申請はかなりの開きがありました。申請期間は9月30日で終わっていますが、感染の長期化に伴い、引き続き衛生用品等の必要性は高くなっています。事業内容を見直し、再開するよう求めます。
 抽選による「お買い物券」事業は、商連加盟店しか使えないなど限定的です。コロナ禍による危機的状況のもと、商店への支援策は区内全域を余すことなく網羅することが重要と考えます、23区では約半数近くの区がプレミアム付き商品券事業を実施しており、区としても検討を求めます。また、コロナ禍のもと、これまで通りのイベント開催が困難となっているなか、その予算を個店支援に振り向けるなど検討を求めます。
 介護事業者は、この間の介護報酬の引き下げの影響に加え、コロナ禍で多くの事業所が厳しい運営を強いられています。区が行った「障害福祉・介護保険サービスの事業継続支援」は非常に重要な取組でした。感染長期化のもとで、更なる支援策の検討を求めます。
 新型コロナの影響で減収となった国保料の減免実績は、対象約2万3千世帯に対し、9月末時点で申請が約1600件、決定が約800件と極めて低い結果となっています。区内商店会や団体からも減免の周知を徹底してほしいとの要望が出されています。国保加入世帯への案内の再送付等、周知徹底と来年度も継続するよう求めます。
 来年度の国保料について、値上げはせず引き下げること、子どもの均等割軽減について、国の動きを待つだけでなく、区独自に実施に向けて検討するよう求めます。
 生活に困窮する世帯に対しては、この間の1回きりの給付や補助ではなく継続した支援が必要です。困窮している世帯の実態を把握し、必要な支援を講じること、また「生活保護の申請は国民の権利」であることを広く周知し、必要な人すべてが利用できるよう取組みを求めます。 
 加齢性難聴者への補聴器購入助成についてです。
 区は、加齢性難聴者への補聴器助成について「公的補助については様々なやり方があり、他自治体の状況を調査しているが、現時点で補助は考えていない」と答弁しました。東京都は、包括補助事業で、今後も低所得者の高齢者に対し補聴器の支給等を行っている区市町村を支援していくとしています。23区でも補助制度を実施する自治体は広がってきています。認知症対策の上からも、早期の補聴器使用が重要であり、杉並区としても、補聴器の購入助成の実施に踏み切るべきであります。
 移動支援について、コロナ禍のもとでも、十数年来寄せられてきた切実な願いによりそった見直しを実施するよう強く求めます。また、この間指摘してきた課題については、改善するよう改めて求めておきます。 
 最後に、教育施策についてです。
 就学援助について、今年度の就学援助認定者数3495人のうち、新型コロナの影響で家計が急変し特別な事情として申請した人数が65人でした。コロナ禍の経済への影響を考えると申請者数は想像以上に少ないと受け止めます。区ホームページの改善や、小中学校での資料配布などを行い、必要としている世帯への周知を強めることを求めます。
 区立済美養護学校の児童生徒の増加による教室不足やトイレ清掃の少なさ、職員室の狭さなどについて、保護者や教職員からよせられた声をもとに改善を求めました。それに対し、吉田副区長が、わが党が難癖をつけているかのように捻じ曲げて答弁したことは非常に残念です。傍聴していた区民から「副区長の発言は、本来、杉並区が持っている必要もない学校を東京都に代わって頑張ってやっているのだから、そこを見ないで文句を言うな、と言わんばかりに聞こえてきて涙が出てきました。そんなつもりでおっしゃったとは思いたくありませんが、区政運営のトップ集団にそんな思いがあるとすれば、大きな不安を覚えます」というメールが届きました。
 子どもたちが安心して快適に学び過ごすための環境を整備することは区の責務です。保護者や学校関係者から寄せられた声を真摯に受け止め、早急に改善されるよう求めます。
 
 以上、意見を述べてまいりました。
 多くの資料を準備していただいた職員の皆さんに厚くお礼を申し上げ、意見の開陳を終わります。